設計業務

排水槽容量計算・排水ポンプの選定方法を動画と記事で解説します

受注したビルに地下排水槽なんてのがあるんだけど、よくわからない。

槽の大きさとかポンプってどうやって決定するん?

地階があるので地下排水槽の設置が必要になったが、排水槽の容量の決定方法なんてわからない。ましてや排水ポンプの能力の計算方法なんて皆目見当がつかず困っている。

水道局の資料の計算例を見ても入ってこない。

そんな方に参考になればと排水槽(汚水槽・雑排水槽・混合槽対応)の容量計算の方法排水ポンプの選定方法について解説いたします。

尚、5以降の手順は地下排水槽全て(汚水・雑排水・混合・雨水・湧水)同じです。

ちなみに、私は京都の水道屋さんで15年以上勤務しております。資格は排水設備工事責任技術者・1級管工事施工管理技士を保有しております。

水道修理のことから水理計算方法まである程度の信頼の担保になると思います。

管材・ポンプ屋さんで見積するとざっくりとした計算で能力選定されます。
今回の計算を自力で行うことでポンプ能力を下げられる可能性もあり、結果的に予算削減になるというメリットがあります

計算手順はYoutube動画でご説明します

排水槽の有効容量の計算方法と排水ポンプの設定・水位設定の動画で分割しております。

雨水槽の場合はこちら

雨水槽容量計算・雨水排水ポンプの選定方法を動画と記事で解説します

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湧水槽の場合はこちら

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ひろし
下記に文章と画像でも記載しておりますので、是非ご覧ください

排水槽及び排水ポンプの計算手順

  1. 対象の排水量を求める
  2. 排水量から有効容量・槽の大きさを計算する
  3. 排水量から排水ポンプの能力を求める
  4. 配管経路を確認する
  5. 排水ポンプの口径を求める
  6. 排水ポンプの全揚程を求め、表から選定する
  7. 排水ポンプの水位設定をする

1.対象の排水量を求める

  1. 器具排水量    → 排水槽に流入する器具排水量の合計から求める
  2. 建築用途別汚水量 → JIS A 3302-2000 表参照、人数や面積で求める

1-1.器具排水量の場合

各器具の1分あたりの時間最大使用水量を求め、合計する。

公式

1回当たりの使用水量(ℓ/回)× 個数 × 最大使用回数(回/h)  × 同時使用率(%) = 時間最大使用水量(ℓ/h)÷ 60 = 時間最大使用水量(ℓ/min)

対象の各器具毎に戸数・使用水量・最大使用回数・同時使用率をExcelなどで計算します(下記表参照)

器具種類個数1回あたり
使用水量
(ℓ/回)
最大使用回数
(回/h)
同時使用率
(%)
時間最大
使用水量
(ℓ/h)
大便器(洗浄タンク)515840240
洗面器410850160
流し515640180
シャワー524340144
合計724ℓ/h
12ℓ/min

ここでは、大便器(洗浄タンク)5台、1回当たりの使用水量15ℓ、最大使用回数8回、同時使用率40%としました。

上の公式を当てはめると、 15ℓ × 8回 × 40% × 5台 = 240ℓ/h ÷ 60= 4ℓ/min になります。

対象器具全て求め、合計値を ℓ/min に変換しても差し支えありません。(サンプルの通り)

個数・同時使用率以外の各数値は下記の表を参照

引用元:図解入門よくわかる最新給排水衛生設備の基本と仕組み[第2版]

※最大使用回数及び同時使用率は任意ですが、実態に即した数字を入れます。

例えば、同時使用率は下記の総水栓数による同時使用水栓数で考えることも可能です。

対象の大便器(洗浄タンク)が6栓ある場合、同時使用水栓数は3栓なので同時使用率は3÷6=0.5=50%といった具合ですね。

引用元:京都市上下水道局仕様書より

1-2.建築用途別汚水量の場合

JIS A 3302-2000 の下記表より建築用途別汚水量を求める

算定係数 (n)× 面積(個数・席数など)× 1人当たりの汚水量 = 建築用途別汚水量(ℓ/d)

今回はホテル(結婚式場・宴会場を持たない場合)と仮定し

0.075(n) × 100(㎡:仮)×400(ℓ)= 3,000(ℓ/d)

以降は公式により、計画時間最大汚水量を求める

公式

建築用途別汚水量(ℓ/d)÷(使用時間(h)× 60)× 変動係数(標準は3)

計画時間最大汚水量(ℓ/min)

3,000(ℓ/d)÷(10(h)× 60)× 3 = 15(ℓ/min)となります(下記表参照)

どちらで計算したら良いかは、地方公共団体の考え方で変わる可能性が高いです。

基本は計算上都合の良い方(建築面積が小さいところは少ない方)を私は選んでます。

※呼称が違うのでややこしいですが、時間最大使用水量と時間最大汚水量はほぼ同義と捉えていただいて差し支えありません。

2.排水量から有効容量・槽の大きさを計算する

さて排水槽の有効容量を求めていきますが、簡単に求めることができます。

排水槽の有効容量は対象の排水量(ℓ/min)の2時間分になります。

15(ℓ/min)× 120(min)= 1,800(ℓ/min)= 1.8 ㎥

又、排水槽の大きさは有効容量の1.5〜2.0倍になります。

1.8 ㎥の場合、2.7 〜 3.6 ㎥ の範囲内になります。(下記表参照)

ただし有効容量の水位は、流入および吐出し管より下部になるように検討しなければなりません(下記図参照)

計算した槽の大きさに合う体積(容積)になるように計算します。

体積イは四角錐台なのでオベリスクの公式を用いて計算しています。

詳細は下記の表をご覧下さい。

3.排水量から排水ポンプの能力を求める

計画時間最大汚水量(ℓ/min)の3分~10分を1分で排水できる能力に設定します。

例:上で計算した結果 15(ℓ/min)の場合は、45(ℓ/min)~150(ℓ/min)となります。

※ただし、400(ℓ/min)以下にすること。

4.配管経路を確認する

まずは、下記の(落書きみたいですが)平面図から立面図を作成します。

配管の高さのみを集計します。

このとき、ポンプの停止水位とます深を差し引いて計算して下さい。

配管延長および継手・弁の数を各口径ごとに集計します。

排水ポンプからの配管口径は2本を合流させる場合は1ランク上の口径を使用して下さい。

 

5.排水ポンプの口径を求める

3で求めた排水ポンプの能力値(1分当たりの流量)を使います。ここでは 150(ℓ/min )としていますが、1,000で除算しm3に直してます。

公式

D(ポンプ口径)= 146 × ポンプの能力÷ 1.0〜1.5(単独運転の流速V)

D(ポンプ口径)= 146 × 0.150(流量)÷ 1.5(単独運転の流速V)= 46.17

46.17 <  50なので、50mmとします。

さらに流速の確認も行います。排水は流速 0.6m/s 〜 3.0m/s の範囲に設定します。

公式

V(流速) = 4Q(1秒当たりの流量) ÷ π(円周率) × D(口径)^2

詳細は下記の表をご覧下さい。


6.排水ポンプの全揚程を求め、表から選定する

排水ポンプの全揚程を求めていきます。

・TH (ポンプ全揚程)

= Hf(管路損失)+ Ha(※実揚程) + Ho(放流速度損失)※動画で記載間違えあり

・Ha(実揚程)= 配管の高さの合計

・Hf(管路損失)=  hf(延長部) + ha(継手部)

1.Ha(実揚程)を求める

先ほどの高さを確認したのはこのためです。

今回は 2.9m とします。

2.hf(延長部)の損失を求める

hf = fm × (L÷D)×(V^2÷2g)

※Lは管延長,Dは口径(m),Vは計算結果の流速,gは重力加速度

fm = 124.6 ÷ D^ 1/3 × n^2 ※nは粗度係数。塩ビの場合は0.01

公式が複雑なため、詳細は下記の表をご覧下さい。

3.ha(継手部)の損失を求める
継手・弁類口径損失係数
V^2/2g
個数小計
エルボ90°500.290.082320.04773
仕切弁500.170.082310.01399
逆止弁501.20.082310.09875
エルボ90°650.290.028710.00832
合 計0.169
4.Hf(管路損失)を求める

hf(延長部) + ha(継手部)= Hf(管路損失)

Hf0.20(50mm)0.00(65mm)0.1690.373
 5.Ho(放流速度損失)を求める

Ho= fo × (V^2÷2g) fo= 1(角端) fo ・・・放流損失

= 1 × 0.287(各口径で比較して小さい方) = 0.287

放流部の形状で下記の図を参考にfoを変更します。

6.TH(全揚程)を求める

TH (ポンプ全揚程)= Hf(管路損失)+ Ha(実揚程) + Ho(放流速度損失)

= 0.373 + 2.9 + 0.287

= 3.302 × 安全値 1.2 = 3.962 ≒ 4.0m

7.ポンプを選定する

ポンプメーカーの性能成績書からポンプの能力と全揚程の数値が交わる点を確認し選定を行います。

ポンプ能力は 150ℓ/min ,全揚程が4.0m とすると下記の図のようになります。

7.排水ポンプの水位設定をする

水位の設定は停止水位、起動水位、並列運転水位、警報水位、規定水位があります。

・停止水位・・・ポンプの停止水位(ポンプの仕様書に記載)

停止水位は仮に0.2mとします。以降は下記の図をもとに計算します。

・起動水位・・・ポンプ3分稼動した数値から停止水位を差し引いた釜場の容積(釜場の有効容量)を引いた数値を槽本体の面積で割った高さ

{(0.15 × 3)- 0.8 × 0.8 × 0.3 } ÷ (2.0 × 1.0) = 0.129

起動水位は0.129mとします。

・並列運転水位・・・起動水位の10cm上部もしくはポンプ3分稼動した数値槽本体の面積で割った高さ

(0.15 × 3)÷ 2.0 × 1.0 = 0.225

並列運転水位は0.225mとします。

・警報水位・・・並列起動水位の10cm上部

警報水位は0.1mとします。

・規定水位・・・槽の有効容量から釜場の有効容量を引いた数値を槽本体の面積で割った高さ

上の有効容量より 1.8 - 0.192 =1.608( m3/min)

1.608 ÷ 2.0 = 0.804

規定水位は 0.804m とします。

以上の計算結果を図で表すと下記の通りになります。

おわりに

以上が、排水槽(汚水・雑排水・混合槽)の容量の計算及び排水ポンプの決定手順です。是非参考にしていただけると嬉しいです。

又、後日Excel計算書を販売する予定です!お役立ていただけるように入力手間を最小限にするように作成するつもりですので是非ご利用いただけたらなと思います。

質問も受け付けておりますのでお問合せフォームにて送信お願い致します。

 

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